闇の中でクラウドを呼ぶ声がする……
『……大丈夫か? ……聞こえているか?』
クラウド「…………ああ。」
『あの時は…… ヒザ擦りむいただけですんだけど……』
クラウド「……あの時?」
『今度はどうかな? 起きられるか?』
クラウド「……あの時? ……今度は?」
『……気にするな。今は身体の事だけ考えるんだ。
……身体、動かせるか?』
クラウド「……やってみる。」
「あっ! 動いた!」
『……どうだ? ゆっくりな。少しずつ少しずつ……』
「もしもし?」
クラウド「……わかってるさ。なあ…… あんた、誰だ?」
「もしも~し!」
クラウドが目を開けると、そこは花畑の中であった
そしてひとりの女性がクラウドを心配そうに見つめている…
教会 「だいじょぶ? ここ、スラムの教会。伍番街よ。
いきなり、落ちてくるんだもん。驚いちゃった。」
クラウド「……落ちてきた。」
「屋根と、花畑、クッションになったのかな。運、いいね。」
クラウド「花畑…… あんたの花畑? それは悪かったな。」
「気にしないで。お花、結構強いし、ここ、特別な場所だから。
ミッドガルって草や花、あまり育たないでしょ?
でも、ここだけ花、咲くの。好きなんだ、ここ。」
そう言って花畑の手入れをし始める
「……また、会えたね。」
クラウドは意外な言葉に考え込む……
「……覚えてないの?」
クラウド「会った事がある…… ああ、覚えてるさ。花を売ってたな。」
「あっ! 嬉しいな~!
あの時は、お花、買ってくれてありがと。」
そうしてまた花畑の手入れをするが、ちょっと顔を上げると
「ね、マテリア、持ってるんだね。私も持ってるんだ。」
クラウド「今はマテリアは珍しくも何ともない。」
「私のは特別。だって、何の役にも立たないの。」
クラウド「……役に立たない? 使い方を知らないだけだろ?」
「そんな事、無いけど…… でも、役に立たなくてもいいの。
身に付けていると安心できるし、
お母さんが残してくれた……」
彼女はふと遠い目をした……
彼女の縛ってある髪の結び目に、確かに白いマテリアが付けられている
魔晄が生み出した究極の力-マテリア
マテリアとは、魔晄を高圧縮して出来る結晶体である
見かけは小石くらいの大きさだが、それには様々な力が眠っている
それを使用する事で通常使えない『魔法』等が唱えられたりするのだ
種類はマテリアにより様々で絶大なパワーを持つマテリアもあるという
またマテリアはほとんどが人工的な物であるが
ごく稀に自然界にも存在するという
何故、マテリアを使用する事で超人的な力を引き出せるかは今のとこ謎である
「ね、いろいろ、お話ししたいんだけどどうかな?
せっかく、こうしてまた、会えたんだし…… ね?」
クラウド「ああ、構わない。」
「じゃ、待ってて。お花の手入れ、すぐ終わるから。」
そう言って再び花の手入れを始めた……
クラウドが焦れったくなって話しかけると
「も~少し待ってて。
あ! そう言えば、まだだった。お互い、名前、知らないね。
私は…… 私、花売りのエアリス。よろしくね。」
クラウド「俺はクラウドだ。仕事は…… 仕事は『何でも屋』だ。」
エアリス「はぁ…… 何でも屋さん。」
クラウド「何でもやるのさ。何がおかしい! どうして笑う!」
エアリス「ごめんなさい…… でも、ね。」
その時、教会の入り口から黒いスーツを着た男が入ってきた!
クラウドが何だろうと近づくと
エアリス「クラウド! 構っちゃダメ!
ねえ、クラウド。ボディガードも仕事のうち?
何でも屋さん、でしょ?」
クラウド「……そうだけどな。」
エアリス「ここから連れ出して。家まで、連れてって。」
クラウド「お引き受けしましょう。しかし、安くはない。」
エアリス「じゃあねえ…… デート、1回!」
クラウドは苦笑しながらも承知すると、その男に向かって
クラウド「何処の誰だか知らないが…… 知らない……?」
クラウドがちょっと頭を悩ませていると
一瞬目の前が白くなり、例の声が聞こえてくる……
『……知ってるよ。』
クラウド「そうだ…… 俺は知っている。その制服は……」
「……お姉ちゃん、こいつ、何だか変だぞ、と。」
クラウド「黙れ! 神羅の犬め!」
更にその男の後から神羅の兵士達がやってきた
神羅兵 「レノさん! 殺っちまいますか?」
レノ 「考え中だぞ、と。」
レノと呼ばれた黒服の男が少し考えていると
エアリス「ここで戦ってほしくない! お花、踏まないでほしいの!
出口、奥にあるから。」
そうしてエアリスはクラウドを連れ、裏口へと逃げる
レノは花畑に脚を踏み入れながらクラウドの瞳を思い出していた
レノ 「あれは…… 魔晄の目。ま、いいかぁ。お仕事お仕事、と。
あっ! お花、踏まないで… だと。」
神羅兵 「レノさん、踏んだ!」
神羅兵 「花、ぐしゃぐしゃ!」
神羅兵 「怒られる~!」
思わず神羅兵達が突っ込む!!
何故エアリスが神羅に追われているのかわからないが
取りあえず教会から出ようとクラウドは教会の中から出ようとする
教会の中は神羅の物であろうロケットらしき物が突き刺さっており
ぐちゃぐちゃになっている
恐らく何かの実験が失敗してなったのであろうが
クラウドは瓦礫の間を縫って裏口を目指した
しかし、レノもすぐに見つけ
レノ 「いたぞ、あそこだ!」
エアリス「クラウド、あれ!」
クラウド「わかっている。どうやら見逃すつもりはないようだな。」
エアリス「どうしよう?」
クラウド「捕まるわけにはいかないんだろ? それなら、答えは一つさ。
さあ、エアリス。こっちだ。」
クラウドは崩れた道を飛び越えエアリスを待つ
クラウド「大丈夫だ。俺が受け止めてやる。」
エアリス「わかったわ。しっかり受け止めてね。」
レノ 「古代種が逃げるぞ! 撃て、撃て! あ、撃つな!」
神羅兵は思わず銃をエアリスの足元に撃ちつけた!!
エアリスは足場を崩して倒れ込む
エアリス「きゃあっ!」
クラウド「エアリス!」
レノ 「殺っちまったかな、と。抵抗するからだぞ、と。」
エアリスは幸いかすり傷ですんでいたが
神羅兵が捕まえようと近寄ってくる
エアリス「クラウド、助けて!」
クラウド「くそっ! あれは……? エアリス! しばらく待っていろ!」
クラウドは上の方に樽が置いてあるのを見つけた
クラウド「樽がある。これを押してやれば……」
クラウドは樽を勢いよく押すと、見事に神羅兵に直撃した!!
神羅兵 「ぐわっ!」
エアリス「ありがとう、クラウド。」
何とかエアリスも神羅兵を振り切って逃げてきた
クラウド「エアリス、こっちだ。」
クラウドとエアリスは、屋根裏から外に上手く逃げ出せた
エアリス「フフフ…… まだ捜してるね。」
クラウド「初めてじゃないな? 奴らが襲ってきたのは?」
エアリス「……まあ、ね。」
クラウド「タークスだよ、あいつらは。」
エアリス「ふ~ん……」
クラウド「タークスは神羅の組織。
ソルジャーの人材を見つけ出しスカウトするのが役目だ。」
エアリス「こんなに乱暴なやり方で? まるで人さらいみたい。」
クラウド「それに裏じゃ汚い事をやっている。スパイ、殺し屋……
いろいろだ。」
エアリス「そんな顔してるね。」
クラウド「でも、どうしてあんたが狙われる? 何か訳があるんだろ?」
エアリス「う~ん…… 別に。あ、私ソルジャーの素質があるのかも!」
クラウド「そうかもな。なりたいのか?」
エアリス「どうかな~ でも、あんな奴らに捕まるのはイヤ!」
クラウド「それじゃあ、行くぞ!」
クラウドは屋根づたいに走り出す
エアリス「待って…… ちょっと待ってってば!
ハア…… ハア……
ひとりで…… 先に…… 行っちゃうんだもん……」
クラウド「おかしいな…… ソルジャーの素質があるんじゃなかったか?」
エアリス「もう! 意地悪!」
ふたりは思わず笑い出す
エアリス「ねえ…… クラウド。あなた、もしかして…… ソルジャー?」
クラウド「……………… 元ソルジャーだ。どうしてわかった?」
エアリス「……あなたの目。その不思議な輝き……」
クラウド「そう、これは魔晄を浴びた者…… ソルジャーの証。
だが、そうして、あんたがそれを?」
エアリス「……ちょっと、ね。」
クラウド「ちょっと……?」
エアリス「そ、ちょっと! さ、行きましょ! ボディガードさん!」
こうして何とか追跡を振り切り、伍番街スラムの中心辺りに着いた
エアリス-Aerith Gainsborough スラムの花売り。魔晄炉の影響によりミッドガルの
スラムでは本来ならば育たない筈の花を自宅と教会で栽培し、それを
路上で売っている。クラウドが最初に出会った花売りの女性である。
性格は明るく、大胆にて活発であり、周りに小気味よい印象を与える。
スラム育ちではあるが、スラムの生まれではない。
何処か神秘的な雰囲気を備えており、その出生には何か秘密があるようだ。
神羅の組織『タークス』にも度々狙われており、
何やら重大な秘密が彼女にはあるようだ。
歳は22で、クラウドより年上ではあるが、
どこかクラウドに甘えているような感じも受ける。
伍番街 エアリス「フ~! やっと降りられた! さて、と……
こっちよ、私の家は。あの人達が来ないうちに急ぎましょ。」
エアリスに案内され、伍番街を抜けていく
途中、スラムの住宅街に辿り着いた
ここにはおかしな人がいるという
「変なんだよね、この土管の中の人。何を聞いても、
『ああ』とか『うう』しか言わないんだよね。」
エアリス「ここの人、病気みたいなの。
近くで倒れていたのを誰かが助けたんだって。」
土管に入ると、みすぼらしい男がうずくまっている
みすぼらしい男「う…… あ…… あぁ……」
エアリス「この人なの…… ね、助けてあげられない?」
みすぼらしい男「う…… あ…… あぁ……」
クラウド「悪いが俺は医者じゃない。」
エアリス「そう…… そうよね……
あら? この人、入れ墨してる。数字の2、かな。」
何故この男が入れ墨をしているのかはわからないが
どうする事も出来ないので、諦めて土管を出た
そして街を抜けるとエアリスの家に着いた
ここも、教会と同じく花が咲いていた
エアリスの家
エアリス「ただいま、お母さん。」
そうしてエアリスの母が出迎えた
エアリス「この人、クラウド。私のボディーガードよ。」
エルミナ「ボディーガードって…… お前、また狙われたのかい!?
体は!? ケガはないのかい!?」
エアリス「大丈夫。今日はクラウドもいてくれたし。」
エルミナ「ありがとうね、クラウドさん。」
エアリス「ねぇ、これからどうするの?」
クラウド「……七番街は遠いのか? ティファの店に行きたいんだ。」
エアリス「ティファって…… 女の人?」
クラウド「ああ。」
エアリス「彼女?」
クラウド「彼女? そんなんじゃない!」
エアリス「ふふふ。そ~んなにムキにならなくてもいいと思うけど。
でも、まあ、いいわ。七番街だったわね。
私が案内してあげる。」
クラウド「冗談じゃない。また危ない目にあったらどうするんだ?」
エアリス「慣れてるわ。」
クラウド「慣れてる!?
……まあ、そうだとしても女の力を借りるなんて…」
エアリス「女!! 女の力なんて!?
そういう言い方されて黙ってる訳にはいかないわね。
お母さん! 私、七番街までクラウドを送っていくから。」
エルミナ「やれやれ。言い出したら聞かないからね。でも、
明日にしたらどうだい? 今日はもう遅くなってきたし。」
エアリス「うん、わかった、お母さん。」
エルミナ「エアリス、ベッドの準備をしておくれ。」
そう言われてエアリスは2階へと上がっていった……
エアリスの母エルミナはクラウドの瞳をじっと見つめ
エルミナ「あんたのその目の輝きは…… ソルジャーなんだろ?」
クラウド「ああ。しかし、昔の話だ…」
エルミナ「……… 言い難いんだけど… 今夜のうちに出ていって
くれないかい? エアリスには内緒でさ。
ソルジャーなんて……
またエアリスが悲しい思いをする事になる……」
エルミナ-エアリスの母親。夫は10数年前の戦争で戦死して、
今ではエアリスとふたり暮らしである。
エルミナの悲しそうな態度にクラウドは黙って頷いた
クラウドが2階に上がるとエアリスが寝床の準備を終わらせて待っていた
エアリス「七番街へは六番街を抜けていくの。六番街、
ちょっと危険なところだから今夜はゆっくり休んでね。」
クラウドが部屋に入ろうとすると
エアリス「クラウド。お休み。」
そう言ってエアリスは下に降りた
クラウド「参ったな……」
しょうがなくベッドに入り込むのであった
さすがに昼間の作戦でかなり疲れていたようだ
いつの間にやら寝込んでしまっていた
そして、またあの声が聞こえてきた……
『……かなり、アレだな。疲れているみたいだぞ。』
クラウド「…………!?」
『こんなきちんとしたベッド…… 久しぶりだ』
クラウド「……ああ、そうだな。」
『あれ以来、かな。』
そう言うとクラウドの目に、どこか懐かしい風景が浮かんできた
そこではクラウドがベッドに寝転び、母親らしき女性が話しかけてくる
『本当に立派になってぇ。そんなんじゃ、あれだね。
女の子も放っとかないだろ?』
クラウド『……別に。』
『……心配なんだよ。都会にはいろいろ誘惑が多いんだろ?
ちゃんとした彼女がいれば母さん、
少しは安心出来るってもんだ。』
クラウド『……俺は大丈夫だよ。』
『あんたにはねぇ……
ちょっとお姉さんであんたをグイグイ引っ張っていく、
そんな女の子がピッタリだと思うんだけどね。』
クラウド『……興味ないな。』
ふとそこで目が覚めた
クラウド「……いつの間にか眠ってしまったのか。六番街を越えて
七番街へ、か。ひとりでなら何とかなりそうだな。」
そうして部屋を出ようとしたが、ちょっと物音を立ててしまった!
と、隣の部屋にいたエアリスが飛び出してきた
エアリス「もう! またタークス、来たのかと思ったじゃない!
大人しく休んで!」
そうして部屋に戻されてしまった
クラウド「次は見つからないように……」
忍び足で見つからずに家を出、七番街スラムへと向かって
伍番街スラムを出ようとすると、そこには……
伍番街 エアリス「お早い出発、ね。」
クラウド「危険だとわかっているのにあんたに頼る訳にはいかないさ。」
エアリス「言いたい事はそれだけ?
ティファさんのいる『セブンスヘブン』はこの先のスラム
『六番街』を通らないといけないの。案内してあげる。
さ、行きましょ!」
そう言うと、さっさと行ってしまった
クラウドはやれやれと思いながらも
少し嬉しそうにエアリスの後を追うのであった……
六番街への道は瓦礫が散乱している少々危険な道であった
やがて公園の前に辿り着いた
六番街公園 エアリス「この奥に七番街へのゲートがあるの。」
クラウド「わかった。じゃあ、ここで別れようか。ひとりで帰れるか?」
エアリス「嫌~ん、帰れない~!!って言ったらどうするの?」
クラウド「家まで送る。」
エアリス「それって何だかおかしくない?」
クラウド「そうだな。」
エアリス「ちょっと休もっか。」
そう言ってエアリスは公園へと足を入れる
エアリス「懐かしい、まだあったんだ。クラウド、こっち!」
エアリスは滑り台の上でクラウドを呼んだ
クラウドはしょうがなさそうにエアリスの側に行った
エアリス「あなた、クラスは?」
クラウド「クラス?」
エアリス「ソルジャーのクラス。」
クラウド「ああ、俺は…… クラス…… 1STだ。」
エアリス「ふ~ん。同じだ。」
クラウド「誰と同じだって?」
エアリス「初めて好きになった人。」
クラウド「……付き合ってた?」
エアリス「そんなんじゃないの。ちょっと、いいなって思ってた。」
クラウド「もしかしたら知ってるかもしれないな。そいつの名前は?」
エアリス「もう、いいの。」
と、その時公園の向こうからチョコボ車が近づいてきた
クラウドはその座席に乗っている人を見て
クラウド「(ん? あの後ろ………)
ティファ!?」
エアリス「あれに乗っていた人がティファさん? 何処行くのかしら?
それに、様子が変だったわね……」
エアリスはチョコボ車の後を追おうとする
クラウド「待て! 俺ひとりでいい! あんたは帰れ!」
しかしエアリスは先へ行ってしまう
クラウドはしょうがなく後を追うのであった……
クラウドが着いた先は何やら活気のある街であった
悪名高き闇の市場-ウォールマーケット
スラムで一番活気のある街で、様々な物が常に取引されている
が、法の目が行き届かない世界…… 非常に危険な街とも言える
ウォールマーケット
エアリス「ここ、いろんな意味で怖いとこよ。特に女の子にはね。
早くティファさん、見つけなくちゃ。」
クラウドは街外れでそわそわしている男を見つけた
「いまいち、踏ん切りがつかねえな。うーん。
えっ? 何の事だって? へへへ、言わせんなよ。
この右手の奥にある店の事だよ。」
クラウドは奥に行くと
そこには派手な看板とネオンライトに照らされた怪しげな店があった
『蜜蜂の館』と掲げられたその店は、如何にもという感じである
その店の前には数人の男がたむろしている
どうやら入れないで外にあぶれているらしい
また、七番街から旅だったジョニーの姿もあった
ジョニー「ああ…… 入るべきか…… 入らざるべきか?
ああ…… 俺ってこういう時何か文学的になっちゃうんだよな。
参るぜ!! あ!! あんたは?」
ジョニーはクラウドの姿を見つけると
ジョニー「エェ!! あんたも?」
クラウド「お前と一緒にするな。」
ジョニー「エッ…… 俺だってよ。良く考えた末の結論だ。最後の
ミッドガルの思い出によ… でもよ…… あの男が怖くて。」
「いらっしゃい!! もてない君でも、ここ蜜蜂の館でなら
運命の彼女に出会える筈!!
あなたも彼女捜しですか?」
クラウド「ティファという子を知らないか?」
「おっ、あなた、聞き耳早いねえ。ティファちゃんはムチムチの
新人さんだよ。でも、残念です。ティファちゃんは今面接中。
蜜蜂の館の慣わしでね。新人の子はドン・コルネオの屋敷に
連れてかれるんだ。ドン・コルネオは有名な独身貴族。
そろそろ身を固めるってんでお嫁さん捜しに熱心でねえ。」
何と!! ティファがいつの間にそんな状況になっているとは!!
クラウドは急いでドン・コルネオの屋敷に向かった!!
コルネオの館 屋敷の中には男が見張りをしている
「ここは、ウォールマーケットの大物、ドン・コルネオ様の
お屋敷だ。いいか、ドンは男には興味ないんだ。
さっさとどっかへ……」
男はクラウドの姿を見るとそう吐き捨てたが、エアリスの姿を見ると
「ああっ、良く見たら綺麗な姉ちゃんも一緒! ね、どう?
うちのドンと楽しい一時を過ごしてみない?」
エアリス「ね、ここがドンの屋敷みたい。私、行ってくるね。
ティファさんにあなたの事話してきてあげる。」
クラウド「ダメだ!!」
エアリス「どうして?」
クラウド「ここは…… その…… ……わかるだろ?」
エアリス「じゃあ、どうする? あなたも入る?」
クラウド「俺は男だからな。無理矢理入ったら騒ぎになってしまう。」
と、その時エアリスはポンと手を叩き、何回も頷く……
クラウド「かといってエアリスに行かせる訳には…… いや、しかし……
まず、ティファの安全が確認出来な……」
エアリスはその場で含み笑いを隠せずにいる……
クラウド「何がおかしいんだ? エアリス?」
エアリス「クラウド、女の子に変装しなさい。それしかない、うん。」
クラウド「ええっ!?」
クラウドはあまりの展開に驚きを隠せない
エアリスは先程の男に
エアリス「ちょっと待っててね。綺麗な友達、連れてくるから。」
クラウド「エアリス! いくら何でも……」
エアリス「ティファさんが心配なんでしょ? さ、早く早く!」
エアリスは楽しそうにクラウドの手を引っ張り
女装させるべく、まずは服を捜しにブティックへと向かった
ブティック エアリス「すいませ~ん! ドレス1着、くださいな。」
店長 「うーん、ちょっと時間が掛かるかもしれませんが
構いませんか?」
エアリス「何かあったんですか?」
店長 「ちょっと親父の奴スランプなんですよ。
あ、ドレスは俺の親父が作ってるんですよ。」
エアリス「その、親父さん、どちらに?」
店長 「多分、居酒屋で飲んだくれてますよ。」
エアリス「それじゃ……
親父さん、どうにかしないとドレス、ダメって事?」
店長 「はい、そうですね。困ったもんですよ。
! もしかして、お客さん。どうにかして下さるんですか?」
エアリス「だから~!
どうにかしないとドレス、手に入らない、でしょ?」
店長 「本当っすか! お願いしますよ、あのバカ親父をどうにかして
下さいよ。もう、困り果ててたんすよ………」
エアリス「はいはい、どうにかします。クラウド、行きましょ!」
エアリスは驚いているクラウドを連れ、居酒屋へと向かう
居酒屋 エアリス「あの~、服屋の親父さん、ですよね?」
親父 「確かに服屋だがあなたの親父ではないぞ。」
エアリス「そんな事、言ってない……」
クラウド「服を作ってくれ。」
親父 「わしは男物の服は作らんのだが?
それに、あまり気乗りがせんしな。」
エアリス「クラウド、少~し、待ってて。私、話すから。
向こうで、何か飲んでていいよ。」
クラウドは仕方なく飲み物を頼み、エアリスに任せる事にした
エアリス「あのね、おじさん。
あの彼がね、一度でいいから女の子の格好したいって言うの。
それでね、可愛いドレス着せてあげたいんだけど……」
親父 「何と! あんな無愛想な奴がか?」
エアリス「ね、ね、どう? 作ってくれる?」
親父 「ふむ、なかなか面白そうだのう。普通の服ばかり作って
おったのでちょっと飽きとったんだよ。」
エアリス「じゃあ、作ってくれる?」
親父 「ああ、良かろう。それで、どんなドレスがいいんじゃ?」
エアリス「肌触りはさわっとしたの。光具合はつやつやしたの。」
親父 「ふんふん、ようわかったわい。知り合いにその手の事が趣味な
奴がおるので、ちょっと聞いてくるわい。」
どうやら、ドレスは何とか確保できそうだ
クラウドはそんな事があったとは思いもよらなかったが
しばらくして、先程のブティックに行くと
ブティック 親父 「よう、来たな。出来とるよ。早速着てみなさい。」
エアリスに促され、クラウドは渋々試着室に入った
クラウド「これ…… どうやって着るんだ?」
エアリスが覗き込むと
クラウド「わ! 何をするんだ!」
エアリス「やっぱり、ちょっと変。かつら、必要だね。」
親父 「うむうむ、そうだろうと思って知り合いに話をして
おいたんじゃ。『男男男』とかいう看板を出しとるジムが
あるじゃろ? そこに、あんたと同じ趣味の人がいるんじゃ。
彼に相談してみるといいじゃろう。」
クラウド「……同じ趣味?
エアリス、親父さんにどんな説明をしたんだ?」
エアリス「いいじゃない、何でも。ドレス、綺麗だしね!」
クラウドは何か流されながらも男の館へと足を踏み入れた
中では『兄貴』と呼ばれる女じみた男が出迎えた
男の館 兄貴 「あなたね? 可愛くなりたいのは。」
クラウド「可愛く?」
エアリス「そうなの。それで、かつらなんだけど……」
兄貴 「ええ、聞いてるわよ。でも、タダって訳にはねぇ。」
男 「うぉー!!! 兄貴!
可愛い格好は兄貴を極めた者のみが出来るんですぜ!!」
男 「そういう事じゃー!」
男 「と言う事でわしらと勝負じゃー!」
兄貴 「そうね。こいつらとスクワットで勝負しましょう。」
男 「ようがす! わしらがコテンパンにして差し上げますぜ!」
クラウド「もしかして、あんたは。」
エアリス「綺麗な、お兄さん?」
男 「今頃何言っとるんじゃい。兄貴は、兄貴はそれはもう…」
兄貴 「あんた、いいからこっちへ来なさいよ。」
男 「絶対に負けないっすよ。
兄貴のかつらはわしらのもんじゃー!」
兄貴 「やかましいわね、こいつ。」
クラウドは気合いを入れてスクワットを始めた
……しかし、一体何をやっているのだろう……
クラウドの脳裏にはこの事が先程からずっと離れないでいる
そして、何とか勝つ事が出来た
兄貴 「あんた、凄いねぇ。約束通り、これをあげるよ。」
男 「兄貴っー、悔しいすよー、無茶苦茶悔しいっすよー!」
すると突然兄貴が男を殴り倒し
兄貴 「やかましー! 負けた挙げ句に、めそめそすんじゃねえ!」
男 「うう、兄貴の鉄拳は骨の髄まで痺れやすぜ…」
こうして何とかかつらも手に入れる事が出来た
ところで、先程の蜜蜂の館前で躊躇している男がまだいた
「やっぱり、踏ん切りがつかねえや。ええい、これあげるよ。
これがなきゃ、入れないからな。」
彼から会員カードを受け取ってしまった!!
クラウドは早速蜜蜂の館へと急いだ!!!
「おっ! 右手に輝く『会員カード』
どうぞ、お通り下さい。」
クラウド「ここには女装に必要な何かがある。俺にはわかるんだ。」
エアリス「…………ふ~~~~ん。そうやって、ごまかしますか。」
クラウド「行くぜ!!」
クラウドは通常は見せないやる気を全面的に出すと
単身『蜜蜂の館』へ!!
蜜蜂の館 中に入ると蜜蜂のコスチュームに身を包んだ若い女性が出迎える
「ポッ…… お客さん。早くっ早くっ。お部屋を選んでね。
(変なお客…… ま、いつもの事)」
クラウドは部屋を選ぼうとして、とある部屋を選ぶが
クラウド「使用中のようだな。」
鍵穴から覗き見ると
クラウド「……凄い!!」
中では
「ハァ…… フゥ……」
「じいさん、何です? 溜息ばかりついて……」
「ハァ…… そやかてなぁ、ばあさん…」
「またこの部屋の事ですか。」
「ハァ…… なんぼ息子が借りてくれたゆうてもなぁ…
わしらにこんな立派な部屋はなぁ。丸い布団にカクカク風呂。
わし、どうも落ち着かんのやわ。」
「ええんとちゃいますか。ここらは大都会の下、
高級地なんですよ。ばちが当たるちゅうもんですよ。」
「ハァ……」
どうやら場違いなところに着ている中年夫婦らしい
しかし…… 彼らの息子に縁があろうとはその時はまだ誰も知らないのである
また、別の部屋を覗くと
何やら重苦しい雰囲気と共に、謎めいた声が流れてくる
『……風が止んだ……
蘇りし魔王の呪いか… 我が最愛の女王は目覚めぬ……
時は満ちた……
…古代よりかの地に伝わる伝説…』
「ひそひそ……
(おい、そろそろやめないとまずいんじゃないのかい?)」
「ひそひそ……
(プレジデント神羅と会食の約束だろ…)」
「ひそひそ……
(お前言えよ……)」
「ひそひそ……
(言える訳ないだろ……)」
「ひそひそ……
(チェッ!! ま、いいか……)」
どうやら社長の余興に付き合わされている社員達の嘆き声であろう
『…古代よりかの地に伝わる伝説…
……求めるは、約束の地……
……書きひとみもつもの……
……白刃の大剣を背に……
……約束の地へ導かん……』
「ひそひそ……
(まったくうちの社長にも呆れるよ)」
「ひそひそ……
(ミッドガルに出張の時は毎度だぜ。ゴールドソーサーから
遥々来てよ…)」
「ひそひそ……
(お前はまだいいよ、照明係なんだから。俺なんてこの鎧!
すげえ重いんだぞぅ。)」
「ひそひそ……
(ハイハイ…… これも仕事ですから。)」
「ひそひそ……
(そういや、聞いたかい? 社長の王様道楽が奥さんに
ばれたって話。)」
「ひそひそ……
(クックッ…… うそ、それ初耳。)」
「ひそひそ……
(あ、終わったみたいだぞ。ああ~助かった!!)」
と、先程までのひそひそ声が聞こえていたらしく
「ゲッ!! 社長!! じゃ、なかった王様……
うわ~、すいましぇ~ん。古代の呪いは許してぇ~」
哀れ社員は社長にお仕置きを受ける
さて、クラウドは目を離すと、別の部屋を選んだ
クラウド「空いているようだな。この部屋にするか。
この部屋に決めたよ。」
「は~い。決めたら、後はお部屋に入るだけよ。
もう気持ちは変わらない?」
クラウド「何度も言わせないでくれ。」
「怒っちゃや~
(いやだ…… きっと、乱暴なお客ね…)
は~い、どうぞ。」
クラウドは部屋に入ると突然幻影に襲われた
目の前にもうひとりのクラウドが座り込んでいる……
クラウド「ん……? あんたなのか……? こんなところで何してる?」
クラウドは思わず頭を抱え込む……
『そっちこそ、こんなとこで遊んでていいのかい?
いつでも頭抱えていれば問題が解決すると思ってる?』
そうするともうひとりのクラウドはクラウドに重なり合うようにして消えた
そして倒れ込むクラウド……
「やだ! お客さ~ん。たいへ~ん! 誰か~ 誰か、来て~。」
先程の女の子が慌てて助けを呼ぶ
クラウドの目の前は真っ暗になる
そして…… またあの声が響きわたる……
『遠くから眺めてるだけじゃ何も変わらないって
気付いたんだろ。』
クラウド「何言ってる?」
『動き始めたみたいだよ。』
クラウド「何が?」
『ほら、目を覚まして!』
「モミモミモミ… モミモミモミモミ……
タントントン…… タントントントン……
ツンツン…… ……チクッン」
クラウド「うっ…… いてっ!!」
「目を覚まして! 目を覚まして!!」
気が付くと、男に体を叩かれていた
ムッキー「ふぅ~ 良かったぁ。
ぼうずっ!! 倒れちゃったんだって? だめだ、だめだ。
緊張しちゃいかんなあ。」
クラウド「ああ……?」
ムッキー「んっ……? まっ、青春は長くて短し。次、がんばんなさい。
もう時間だっ。じゃね。」
ムッキー-蜜蜂の館に勤める男。マッサージが得意。
いつの間にやら時間が過ぎてしまったらしい
「ごめんなさいね…… いろいろと大人の事情ってもんが
あるのよ。これ、お詫びのしるし。大切に扱ってね。」
女の子からランジェリーを手渡された
クラウド「こんな布きれを、俺が!? 全く、どうかしてるな。」
しかし、女装に必要?なランジェリーも手に入れた事だし
更なる女装の道を極めようとクラウドは控え室へと入っていった
そこでは数人の女の子達が出番を前に念入りに化粧をしているところであった
クラウド「女装するとなれば…… 入念な準備が必要だ。
ここなら、お化粧出来そうだ。
頼みがあるんだ。俺にも化粧をしてくれないか。」
女の子は呆れながらもクラウドの顔を
「塗り塗り塗り塗り…… プッ……
……………………プッ。」
これで準備は万端だ!!
さて、店を出るとエアリスが男達に囲まれていた
エアリス「キャッ!! クラウド!!」
クラウドの姿を見て、男達は一斉に立ち去る
……が、ただ単にエアリスから花を買わされていただけだったようだ
こうして再びブティックに行くと
ブティック 親父 「揃ったようじゃの。早く着て見せてくれ。」
エアリス「着替えるの?」
クラウド「覚悟を決めた。」
そう言うとクラウドは試着室へダッシュした
そして蜜蜂の館で手に入れたランジェリーを身につけ
男の館で勝ち取ったかつらを被り
途中仕入れたティアラを付け
メイクアップされた顔にこれまた仕入れたコロンを振りかけ
ドレスに身を包んだ
そして出てきた姿を見て
親父 「ほう、これはなかなかどうして。
新しい商売になるかもしれんぞ。」
店長 「そうだね、やってみようか。
あんた達。面白い物を見せてもらったよ。親父もやる気出して
くれたし、そのドレスの代金はサービスしとくよ。」
エアリス「お淑やかに歩いてね。クラウドちゃん。」
クラウド「……何がお淑やかにだ。」
エアリス「クラウドちゃん、可愛い。でも、いいな、それ。
ね、私に似合うドレス、な~い?」
店長 「これは、どうでしょう?」
親父 「いやいや、こっちの方がいいぞ。」
店長 「親父、何言ってんだよ。これがいいって。」
親父 「何を言っとる。こっちじゃよ。」
エアリス「あ、私、これがいい。」
店長 「え?」
親父 「え?」
エアリス「ちょっと、着替えてくるね。……覗いちゃダメよ。」
こうしてエアリスも着替え始める
エアリス「どう? 似合ってる?」
クラウドは「私には敵わないね」と言わんばかりに首を振ると
エアリス「もう、可愛くないなぁ!」
こうして見事女装したクラウドとエアリスはコルネオの屋敷へと向かうのであった
コルネオの館 「おおッ!! お友達もこれまたカワイコちゃん!
ささ、中へ中へ!! 2名様、お入り~!!」
中に入ると、受付の男が呼び止める
「お~い、お姉ちゃん達。今ドンに知らせてくるからさ。
ここで待っててくんな。ウロウロしないでくれよ。」
エアリス「今のうち。捜しましょ、ティファさん。
ティファさん何処にいるのかな……」
奥の部屋に行くと、そこにティファはいた
クラウドは思わず後ろを向いてしまう
エアリス「……ティファ、さん? 初めまして。私、エアリス。
あなたの事、クラウドから聞いてるわ。」
ティファ「……あなたは? あっ、公園にいた人?
クラウドと一緒に……」
エアリス「そ、クラウドと一緒に。」
ティファ「そう……」
エアリス「安心して。少し前に知り合ったばかりよ。何でもないの。」
ティファ「安心って…… 何を安心するの? ああ、勘違いしないで。
私とクラウドは単なる幼馴染みよ。何でもないの。」
エアリス「ふたりして『何でもない!』な~んて言ってると
クラウド、ちょっと可哀想。ね、クラウド?」
ティファ「クラウド? ???? クラウド!?
その格好はどうしたの!? ここで何してるの!?
あ、それよりあれからどうしたの!? 身体は大丈夫!?」
クラウド「そんなにいっぺんに質問するな。
この格好は…… ここに入るためには仕方なかった。
身体は大丈夫だ。エアリスに助けてもらった。」
ティファ「そうなの、エアリスさんが……」
クラウド「ティファ、説明してくれ。
こんなところで何をしているんだ。」
ティファ「え、ええ……」
エアリス「オホン! 私、耳、塞いでるね。」
ティファ「……とにかく、無事で良かったわ。」
クラウド「ああ。で、何があったんだ?」
ティファ「伍番魔晄炉から戻ったら怪しい男がうろついていたのよ。
その男をバレットが捕まえてキューッと締めて
話を聞きだしたの。」
クラウド「ここのドンの名前が出たわけか。」
ティファ「そう、ドン・コルネオ。バレットはコルネオなんて
小悪党だから放っておけって言うんだけど……
何だか気になって仕方がないのよ。」
クラウド「わかったよ。コルネオ自身から話を聞こうって訳だな。」
ティファ「それで、何とかここまで来たけどちょっと困ってるの。
コルネオは自分のお嫁さんを捜してるらしいの。
毎日3人の女の子の中からひとりを選んで…… あの……
その。とにかく! そのひとりに私が選ばれなければ……
今夜はアウトなのよ。」
エアリス「あの…… 聞こえちゃったんだけど。3人の女の子が
全員あなたの仲間だったら問題なし、じゃないかな?」
ティファ「それはそうだけど……」
エアリス「ここにふたりいるわよ。」
クラウド「ダメだ、エアリス! あんたを巻き込む訳にはいかない。」
エアリス「あら? ティファさんなら危険な目に遭ってもいいの?」
クラウド「いや、ティファは……」
ティファ「いいの?」
エアリス「私、スラム育ちだから危険な事、慣れてるの。
あなたこそ、私信じてくれる?」
ティファ「ありがとう、エアリスさん。」
エアリス「エアリス、でいいわよ。」
その時
「お~い!! お姉ちゃん達、時間だよ。
コルネオ様がお待ちかねだ!
ウロウロするなって言ったのに……
これだから、近頃のおネェちゃん達は…… 早くしてくれよ!」
クラウド「聞くまでもないと思うけどあとのひとりはやっぱり……
俺…… なんだろうな?」
ティファ「聞くまでも。」
エアリス「ないわね。」
ティファ「フフフ…… その格好、良く見るとナカナカじゃない。
バレットが見たら何て言うかな……」
エアリス「早く行かないと怪しまれない?」
こうしてクラウドは覚悟を決めて、ドン・コルネオの部屋へと行くのであった
部屋に入ると、椅子に腰掛けている怪しげなオヤジがいる
そして側近の男がクラウド達に指示をする
コッチ 「よ~し娘ども! ドン・コルネオの前に整列するのだぁ!」
コルネオは机に乗り出し
コルネオ「ほひ~! いいの~、いいの~!
どのおなごにしようかな? ほひ~ほひ~!
この娘にしようかな~? それともこの娘かな~?」
コルネオはクラウドの顔を眺め込むが、クラウドはさすがに視線をそらす
コルネオ「ほひ~!! 決めた決~めた!! 今夜の相手は……
この骨太のおなごだ!」
何と、選ばれたのは
クラウド「ちょ、ちょ、ちょっと待て! いや、待って下さい!」
コルネオ「ほひ~! その拒む仕草がういの~、うぶいの~
後はお前達にやる!」
「ヘイ!! いただきやっす!」
コルネオ「さ~て、行こうかの~!」
クラウドはティファとエアリスの顔を見て助けを求めるが
彼女らはただ「行くしかない」と頷くばかり
仕方がなさそうに頭を垂れ、そしてコルネオの後を追うのであった……
連れてこられたのは奥にあるコルネオの寝室であった
悪趣味な飾りがベッドの周りに滞りなく置かれ
何故か「興奮剤」までもが用意されている始末……
コルネオ「ほひ~、やっとふたりきり……
さあ子猫ちゃん…… 僕の胸へカモ~ン!
ほひ~、何度見てもカワイイの~
お…… お前も、俺の事好きか?」
クラウドはもう自棄っぱちで
クラウド「もちろんですわ。」
コルネオ「ほひ、嬉しい事言ってくれるのォ!
ほんなら、ナ、ナニがしたい?」
クラウド「あなたのス・キ・な・コ・ト。」
コルネオ「ほひほひ~!! た、たまらん! じゃあ、お願い……
チューして、チュー!!」
クラウド「ええ……」
そう言うとクラウドはコルネオに近づき、顔を寄せ始める……
そして今にも唇と唇とが重なり合うその時!!
「ちょっと待ったーッ!!」
そこに飛び込んできたのは、ティファとエアリスだ
ふたりは近寄ってきた側近の男どもをあっさりと片付けて
クラウドの様子を見に来たのだ
コルネオ「ほひ~。何だ、何だ! 何者だ!」
ティファ「クラウド…… まさかあなた今ホンキで……」
クラウドは慌てて首を振り、そして着ている服を脱ぎ捨てた
コルネオ「オ、オトコ!? どーなってるの?」
ティファ「悪いけど質問するのは私達の方よ。手下に何を探らせてたの?
言いなさい! 言わないと……」
クラウド「……切り落とすぞ。」
コルネオ「や、やめてくれ! ちゃんと話す! 何でも話す!」
ティファ「さ、どうぞ。」
コルネオ「……片腕が銃の男のねぐらを捜させたんだ。
そういう依頼があったんだ。」
ティファ「誰から?」
コルネオ「ほひ~! 喋ったら殺される!」
ティファ「言いなさい! 言わないと……」
エアリス「……捻り切っちゃうわよ。」
コルネオ「ほひ~! 神羅のハイデッカーだ!
治安維持部門統括ハイデッカーだ!」
クラウド「治安維持部門統括!?」
ティファ「神羅ですって!! 神羅の目的は!? 言いなさい!
言わないと…… ……摺り潰すわよ。」
コルネオ「ほひ…… 姉ちゃん…… 本気だな。……偉い偉い。
……俺もふざけてる場合じゃねえな。
神羅はアバランチとかいうちっこい裏組織を潰すつもりだ。
アジトもろともな。文字どおり、潰しちまうんだ。
プレートを支える柱を壊してよ。」
ティファ「柱を壊す!?」
コルネオ「どうなるかわかるだろ? プレートがヒューッ、ドガガガ!!
だ。アバランチのアジトは七番街スラムだってな。
この六番街スラムじゃなくて俺はホッとしてるぜ。」
ティファ「七番街スラムが無くなる!?
クラウド、七番街へ一緒に行ってくれる?」
クラウド「もちろんだ。ティファ。」
コルネオ「ちょっと待った!」
クラウド「黙れ!」
コルネオ「すぐ終わるから聞いてくれ。俺達みたいな悪党が、こうやって
ぺらぺらとホントの事を喋るのはどんな時だと思う?」
クラウドは何かおかしいなと思いながら
クラウド「勝利を確信している時。」
コルネオ「ほひ~! あったり~!」
そう言うとコルネオは近くの紐を引っ張った!
突然、クラウド達の足場がなくなり、クラウド達は下に落とされてしまった!!
コルネオ-ウォールマーケットのドン。大変な好色家で、毎日女の子を連れてきては
自分の相手をさせている。「ほひ~」が口癖で、日頃から「興奮剤」を
使用している。が、その色ボケした態度の裏には抜け目がなく、暗黒街の
ボスとしての素顔も垣間見せる。
一方、ここ神羅ビルの社長室では
プレジデントが部下を呼んでいるところであった
神羅ビル プレジデント神羅「準備の方は?」
ハイデッカー「ガハハ!! 順調順調! 実行部隊はタークスです。」
リーブ 「プレジデント! 本当にやるのですか?
たかだか数人の組織を潰すのに……」
プレジデント神羅「今さら何かね、リーブ君。」
リーブ 「……いいえ。しかし、私は都市開発責任者としてミッドガルの
建造、運営のすべてに関わってきました。ですから……」
ハイデッカー「リーブ、そういう個人的な問題は朝のうちにトイレで
流しちまうんだな!」
リーブ 「市長も反対しているわけであり……」
ハイデッカー「市長!? このビルの中でボソボソと飯を食ってる
あいつか!? あいつを、まだ市長と呼ぶのか?
それでは失礼します!」
ハイデッカーが行くのをリーブは止めようとするが
プレジデント神羅「君は疲れているんだよ。
休暇でもとって旅行でも行ってなさい。」
リーブは何も言えずにそこを去った
プレジデント神羅「七番街を破壊する。アバランチの仕業として
報道する。神羅カンパニーによる救助活動。
フフフ…… 完璧だ。」
ハイデッカー-神羅の治安維持部門統括。その名の通りソルジャーを始めとする
治安部隊の頂点に立つ。しかし、一見豪快そうな容姿はしているものの
性格は卑屈で執念深く、部下に対しての八つ当たりが激しいため、
信頼は低いという。
リーブ-都市開発部門統括。魔晄炉8基を抱えるミッドガルの設計と建造に深く
関わってきた有能はエンジニア。ただ誠実すぎる性格が災いしてか、
個性派ぞろいの神羅のブレインからはちょっとあぶれているらしい。
何処か地方の出身らしく、たまに訛りが出てしまう。
田舎には年老いた両親がおり、つい最近ミッドガルに招待してたが、何処か
手筈を間違えたのかウォールマーケットの蜜蜂の館に行ってしまったらしい。
さて、コルネオに落とされたクラウド達は、下水道に倒れていた
何とか無事だったようだが
下水道 クラウド「大丈夫か?」
エアリス「うん。」
ティファ「もう! サイテーね、これ。」
エアリス「ま、最悪の事態からは逃れられた……」
と、何か獣の唸り声が聞こえてくる
エアリス「……でもないみたい。」
襲ってきたのはコルネオ子飼いの魔物、アプスであった。
何とか倒すと
ティファ「もうダメだわ…… マリン…… バレット…… スラムの人達。」
エアリス「諦めない、諦めない。
柱、壊すなんてそんなに簡単じゃない、でしょ?」
ティファ「………… そうね…… そうよね! まだ時間はあるよね。」
こうして下水道を進み、何とか抜け出すと
そこは列車の廃棄場所「列車墓場」であった
列車墓場 クラウド「エアリス。すっかり巻き込んでしまって……」
エアリス「ここから帰れ! な~んて言わないでね。」
ティファ「え~と……
明かりのついている車両を抜けて行けば出られそうね。」
クラウド達は車両を抜け、ようやく七番街へと戻ってきた
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